当協会は愛知県内の医療ソーシャルワーカーで構成される専門団体です。

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高齢者問題専門職ネットワーク研修会報告

加藤哲也(医療法人偕行会名古屋共立病院)

 高齢者問題専門職ネットワークは、愛知県弁護士会が中心となり、愛知県医療ソーシャルワーカー協会、愛知県社会福祉士会、愛知県司法書士会、愛知県精神保健福祉士会等で構成し、研修会等を開催するものです。構成団体の会員であれば、事前申込不要・直接現地・無料で参加できます。
 平成28年6月18日(土)、名古屋市東区在宅サービスセンターにて「成年後見制度利用促進法案と民法改正法案について」というテーマで研修会が開催され、各会から50名程の参加がありました。今回は以下の演者による報告がありました。
 

第1部テーマ:「民法改正法案について~郵便物及び死後事務に関する民法等の改正~」
報告者:熊田 均 氏(愛知県弁護士会)

1)成年後見人宛の郵便物に関する後見人の権限(保佐・補助は対象外)
  • 郵便物及び死後事務に関する民法等の改正について、平成28年10月13日から施行される。
  • 被後見人宛の郵送物に関して、後見人が裁判所へ請求し許可を得れば、必要の範囲内において、郵便物の転送、開封、閲覧が認められる旨が条文化された
  • 債権や債務に関する郵便物を把握することを目的の一つとしており、許可される転送期間は6ヶ月以内とされ更新されない。年1回しか届かない郵送物がありうる場合は、再度申立をする必要も生ずる。
  • 年賀状等の後見人の事務に関するものではない郵送物、また被後見人から閲覧請求があった郵便物は速やかに被後見人に交付しなければならない。


2)成年被後見人の死亡後の後見人による死後事務の権限(保佐・補助は対象外)
被後見人の死亡後、その必要性があり、相続人の意思に反しないことが明らかである場合に限り、相続人が財産を管理することができるようになるまでの間、後見人が以下を行えるとされた。
  • 相続財産に属する特定の財産の保全に必要な行為は可能
  • 相続財産に属する債務で、弁済期が到来している債務は弁済可能
  • 死体の火葬・埋葬に関する契約の締結と、その他相続財産の保全に必要な行為は、裁判所に申請し許可を得れば可能



第2部テーマ:「成年後見制度利用促進法案について」
報告者:中島 康雄 氏(愛知県弁護士会)


  • 平成28年4月15日に公布され、5月13日に施行された。
  • 基本理念に「ノーマライゼーション」「自己決定権の尊重」が盛り込まれた。
  • 基本方針に「保佐及び補助の制度の利用を促進する方策の検討」「任意後見制度の積極的な活用」「被後見人等の医療等に係る意思決定が困難な者への支援等の検討」が盛り込まれた。
  • 内閣総理大臣や各大臣で組織される「成年後見制度利用促進会議」と有識者で構成される「成年後見制度利用促進委員会」にて施行後2年以内に体制を整備する。


全体の意見交換
  • 権限が不明確であった行為のいくつかが明確になった。安心できる面もあれば、作業負担の増加ややりにくくなった面もある
  • まだまだ曖昧な点も多く、今後の議論や判例を積み重ねないと明らかにならない点が多数ある
  • 様々な団体から声明が出されており、成年後見制度自体の見直しを行う事が必要なのではないかとの意見もある。
所感
 被後見人の死後、入院費の支払いが可能となる点、現金化していなくても金融機関から出金できるようになる可能性がある点は、医療機関にとって朗報と感じた。

日 時:平成28年10月15日(土)午後1時~午後3時
テーマ:名古屋市在宅医療・介護連携支援センターについて(仮)
発表者:一般社団法人名古屋市医師会 在宅医療・介護連携室
スーパーバイザー・医療福祉士専門官 黒木信之 氏
場 所:愛知県司法書士会館(予定)
※変更することがあります。詳細が決まり次第、会報・ホームページ等でご案内します。