当協会は愛知県内の医療ソーシャルワーカーで構成される専門団体です。

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高齢者問題専門職ネットワーク研修会報告

末藤和正(JA愛知厚生連海南病院)

 高齢者問題専門職ネットワークは、愛知県弁護士会が中心となり、愛知県医療ソーシャルワーカー協会、愛知県社会福祉士会、愛知県司法書士会、愛知県精神保健福祉士会等で構成し、研修会等を開催するものです。構成団体の会員であれば、事前申込不要・直接現地・無料で参加できます。
 平成28年2月13日(土)、愛知県司法書士会館で研修会が開催されました。各会から50名程の参加がありました。今回は以下の演者による報告でした。
 

第1部「今日の葬祭事情」
イズモ葬祭 若松俊秀 氏(中川追憶館店長) 
   平田好史 氏(1級葬祭ディレクター)

・ 傾向
仕事帰りにお通夜、身内のみの葬儀、通夜か葬儀のいずれかにしか参列しない、四十九日以後に出していた「香典返し」を葬儀・通夜の場で渡す「その場返し」などの簡略化が進んでいる。
誰も来ないお墓、散骨・樹木葬、お墓マンションが増加している。
・ 名古屋市
人口228万人 H27年死亡者数21450人 月に約2300体が火葬されている。
生活保護受給者の場合は民生子ども課保護係と連携する。生活保護者ではない場合は総務課庶務係と連携し、相続人の戸籍調査を行ない、順番に相続・葬儀の意思を確認する。全員拒否であれば公費で葬祭執行する。行旅死亡人の場合は身元の特定を進め、特定できれば戸籍調査、特定できなければ公費で葬祭執行する。
・死亡届
届出義務者は、同居の親族、同居していない親族、その他の同居者、家主、地主、家屋もしくは土地の管理人、公設所の長、後見人、保佐人、補助人、任意後見人 となっている。
市立病院の届出は公設所の長となる。民間病院の病院長で届出する際は家屋管理人となる。診療所、老人保健施設の場合は家屋管理人の個人情報記載が必要だが、病院の場合は病院の所在住所でも届出が可能となっている。
届出先は①死亡者の本籍地②届出人の居住地③死亡した土地の市区町村となっており、死亡者の住民登録地では原則受理されない。
・エンバーミング
湯灌師、納棺師に続き、エンバーマーも活躍し始めている。エンバーミングには腐敗防止も含まれ、体液を抽出し薬液を注入する。海外との空輸など、日数がかかる際は行なうことが多い。遺体の空輸、役所や警察との連携は日常的にある。
・医療機関へのお願い
親族の有無・連絡先などの情報を提供いただきたい。


第2部「高齢者の運転免許・交通事故をめぐる法律問題」
愛知県弁護士会 矢野和雄弁護士(矢野法律事務所)


・ 道路交通法改正(H27年6月11日成立 現時点では未施行)
免許更新時に受けなければならない認知機能検査を、一定の違反行為をした場合にも受けなければならないこととした。 認知機能検査の結果が内閣府令で定める基準に該当する者は、診断書を提出しなければならないこととした。 認知症であることが判明した時は免許の取り消し、停止をすることができる。
・ 上記の改正に対する日本精神神経学会の反対意見
認知症と危険な運転との因果関係はあきらかでない。
診断をする医師の確保が成されていない。
運転を奪うことによる生活障害への補償がない。
困惑している家族を救わない。
・ 交通事故を発生させた場合の本人と家族の法的責任
本人の刑事責任と行政上の責任は、認知症でない場合と同様に科せられる可能性が高い。
家族が刑事責任を問われることは想定しにくい。
本人の民事責任は、民法709条(不法行為による損害賠償)と自動車損害賠償保障法3条(運行供用者責任)を負う。
家族の民事責任は民法709条(不法行為による損害賠償)と民法714条(監督義務者等の責任)に基づいて責任を問われることが十分に考えられる。ただし、714条は、大府のJR事故について平成28年3月1日に最高裁判所が判決を下す予定であり、その判断が注目されている。
・ 交通事故と任意保険
 現在の約款を前提とすると、相手に支払われる対人・対物は、免許を取り消されていたとしても保険金が支払われる。
 自分に対して支払われる車両保険や人身障害補償保険などは、免許が取り消され、または停止されている時の事故は保険金が支払われない。
免許は有効であるが認知症により正常な運転が出来ない時の事故は、保険金の支払いを拒絶される場合もあり得る。
・ 今後の課題
 公共交通機関がない地域での生活の維持、高齢者が仕事する場合の支障、本人の納得 等

以上の報告を通じて印象的であったのは、以下のことでした。
多死も高齢者ドライバーの増加も、超高齢化社会ゆえの問題であり、ますます高齢人口が増える2025年に向けて、数への対応を含めた整備が必要である。また、生命の最後を証明する死亡診断書も、運転する権利が途絶える診断書も、医療機関から医学的見地によって発行されるが、その書類1枚に込められる福祉的意味は非常に大きく、医療ソーシャルワーカーが高い質を持って支援することが重要である。

次回の予定  日 時:平成28年6月18日(土)午後1時~午後3時 
テーマ:成年後見制度利用促進法案と民法改正法案について
発表者:愛知県弁護士会 熊田均弁護士・中島康雄弁護士
場 所:名古屋市東区在宅サービスセンター(桜通線高岳駅下車すぐ)
※変更することがあります。詳細が決まり次第、会報・ホームページ等でご案内します。