当協会は愛知県内の医療ソーシャルワーカーで構成される専門団体です。

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高齢者問題専門職ネットワーク研修会報告

加藤 哲也(医療法人偕行会名古屋共立病院)

 高齢者問題専門職ネットワークは、愛知県弁護士会が中心となり、愛知県医療ソーシャルワーカー協会、愛知県社会福祉士会、愛知県司法書士会、愛知県精神保健福祉士会等で構成し、研修会等を開催するものです。構成団体の会員であれば、事前申込不要・直接現地・無料で参加できます。
 平成27年10月24日(土)、名古屋市東区在宅サービスセンターにて「成年後見制度から意思決定支援制度へ」というテーマで勉強会が開催されました。各会から40名程の参加がありました。今回は以下の演者による報告が行われました


愛知県弁護士会
日本弁護士連合会高齢者・障害者の権利に関する委員会前委員長
弁護士 熊田 均 氏  

・ 現行の成年後見制度は「代理代行による意思決定」モデルとなっている
裁判所は金銭に関する内容の後見監督業務を行えているが、“本人の意思や希望”までは行えていない。また、本人の医療・介護に関する事実行為ではなく、その契約に基づく法律行為中心の現行成年後見制度では医療・介護のニーズに応えきれない。各方面で法整備に向けた議論が始まっている。
・ イギリスは、本人の意思決定を支援する「意思決定支援法」を、以下の概要で制定した(2005年)
① 意思決定支援、法定後見、任意後見を一つの法律の中で統一的に立法し
② 意思決定支援の原則を明文化した
③ 意思決定能力がない事柄のみ、法定後見の利用を可能とした
④ 「何を本人の意思と考えるべきか」の決定プロセスを可視化した
⑤ 中核的行政機関である意思決定支援庁を設立した
これに基づいて、本人に意思決定能力がなく、支援する親族もいない方の重大な意志決定(例えば、医療同意)の場面では、医療・介護の事業者等からは独立した立場の“独立意思代弁人”という専門職を無償で配置する。独立意思代弁人は、本人や関係者と面談し、本人を支援するメンバーによる検討会議に報告する。そのメンバーは本人が指定することも可能である。
・日本において「意思決定支援制度」を導入したらどうなるか?
意思決定能力という新しい概念が創設され、民法の行為能力との決別が必要になったり、司法的判断機関と行政的監督機関を分離したり、代弁する専門機関等の創設が必要になったり等、様々な整備が必要になる。しかしこれにより、本人の意思の探求プロセスを定め、総合的な意思決定支援体制を地域で確立できるなど、本人の意思を代行・制限するのではなく、意志決定を支援することができるようになる。今こそ転換が必要である

以上の報告を通じて印象的であったのは、以下のことでした。
・ 現行の成年後見制度では、意思決定能力がほとんどない方の後見が大半であり、本人の意思が尊重されているとは言い難い状況である。
・ 本人の意思決定を尊重した場合でも、本人の理解力次第では、不利益を被る内容が本人の意思として通ってしまう恐れもある。
・ 熊田先生が海外にて現地視察を行った際には、独立意思代弁人をMSWが担っていた。


次回の予定 
  日  時:平成28年2月13日(土)午後1時~午後3時
  場  所:未定

発表者①:(株)出雲殿 イズモ葬祭中川店店長 若松俊秀 様
テーマ①:今日の葬祭事情
葬儀の際にご遺体をスマホで撮影する方も珍しくなくなったそうです。そんな昨今、葬祭領域では、「直葬・家族葬」「身寄りのない方」「エンバーミング」「終活」などがキーワードに挙がっています。
実際にどんな手順や内容で葬儀が進んでいくのか、相場はどの程度なのかなど、通例はもちろん、特殊事例も交えながらしていただきます。

発表者②:愛知県弁護士会 矢野和雄弁護士
テーマ②:道路交通法改正 認知症患者の運転を中心に (仮)